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Off Time Vol.10
今回のインタビューは、なんと5歳の時から天道館の門人であり、
それ以来38年稽古に励んでいるヘンリー・デラトロベさんです。
ドイツ人と日本人のご両親を持ち、世界各地で合気道の稽古をされてきたヘンリーさんは、
現在テレビゲーム会社のエレクトロニック・アーツ社長を務められています。
『清水先生から、自分の芯が大事だと学んだ』というヘンリーさんに、
いかに合気道を社長業に活かしているのかなど大いに語って頂きました。('08.10月)


---ヘンリーさんは少年部の頃から天道館で稽古をされていたということですが、まずは入門した時のことをお話ししていただけますか?
 5歳の時に両親から何か武道をやった方が良いということで、いろんな道場を見に行ったんです。最初が柔道で、そのあと剣道、空手と見学に行きましたが、道着が臭かったり、みんなが坊主だったりというのが嫌でした(笑)。そして、最後に見学したのが清水先生の道場で、父が清水先生と面識があったこともあり、天道館に通うことになりました。
 当時は管長が少年部の指導もしていましたが、最初は先生が怖くて怖くて道場が嫌でした。とにかく先生が怖くて仕方ありませんでしたね(笑)。いつも先生に怒られていましたが、たくさんのことを学ばせて頂きました。もう、合気道を初めて38年になります。

---38年はすごいですね!?
 私は父がドイツ人ということもあり、日本のドイツ学園に通っていたのですが、高校を卒業してドイツのミュンヘンへ移りました。ミュンヘンには天道流の道場が多くあって、先生が指導にいらした時は通訳をやりました。その後、北ドイツに就職のために移り、そこでは自分の道場を持ち2年くらい指導をしました。そしてまた日本に戻って天道館で稽古をして、今度は香港に転勤となり、香港でも1年ほど自分の道場を持って稽古をしました。そして、一度日本に戻った後にアメリカへ行って、そこでも合気道を1年くらい教えました。ですから、ずっと合気道を続けてきましたね。

---さて、ヘンリーさんはエレクトロニック・アーツという会社の社長さんをされているわけですが、実際にはどのようなことをされているのですか?
 エレクトロニック・アーツ(EA)はテレビゲーム会社です。アメリカの会社で、3年前に今の職に就きました。メインは、アメリカやヨーロッパで開発しているEAのゲームを日本の消費者の皆さんに合わせてどう効率的に販売していくかということに尽力しています。日本でも少しゲームを開発しているのですが、それも合わせて結果を出し、伸ばしていくかということです。ですから、作品の営業活動からマーケティング、経理などがメインです。

---合気道を続けていて、お仕事に役立ったと感じることはありますか?
 長く続けてきたので、諦めないことを学びましたね。そして、先生に怒られながら続けてはきましたが、仕事の面でそれを活かしてきたと思います。先生を見ながら、組織の運営の仕方や、人との接し方など、上の立場にいる人間がどのようにするべきかいろいろ学んだなと感じます。人を見抜く力っていうのも先生と一緒にいて学びました。実際ドイツで一緒にいた時はすっごい緊張して疲れましたけどね(笑)。

---そんなに緊張したのですか?(笑)
 ミュンヘンにいた頃、私が19歳ぐらいだったと思うのですが、一週間先生の通訳でずっと一緒にいたんですね。その後セミナーが終わってから、熱を出してぶっ倒れました(笑)。緊張して!
 子どものころから先生を知っているので、自分の甘さだとか全部を見抜かれているような気になるんです。ですから、精神的な部分で参ってしまったんでしょうね。その時は通訳兼、「受け」もやっていましたから。でも、この経験が今の自分を強くさせてくれたのだと思います。




---社長さんという立場で普段から特に気をつけていることはありますか?
 これも先生から学んだことで、清水先生は毎年ドイツに指導へ行かれていますが、文化の違いに惑わされずに思っていることをハッキリとおっしゃるんです。ドイツだからこうだとかいうのはどうでもいいことで、人間として自分がどう思っているのかをストレートに伝えていました。先生ほど自分のスタイルを貫ける人を私は知らないですし、今の日本にもなかなかいないんじゃないでしょうか。
 そして今、自分が社長という判断しなくてはいけない立場になり、厳しくならなくてはいけない時やそれによって孤独を感じる時があります。社員みんなに優しくても実はそれは本当の優しさではない。人間て怒られると、なかなか素直になれないじゃないですか。でも、言ってもらえないと後々後悔することになります。言われている時はすごい嫌でも、絶対に怒ることは必要なんです。ですから、自分の方針と違う人に対しては、組織として動いていくために、突っ込む時はビシッと言って曲げてはいけないと思います。それが必ず自分たちのためになるのだと信じていますので。

---ヘンリーさんの年齢で経営者として成功するということはすごいですよね。
 私はいつも必死だったんですよ。今でも不安な気持ちはありますし、危機感でいっぱいと言いますか。これで本当にいいのかと自分に問いかけていますね。ですから、もっと上を目指したいですし、合気道もそうですけど、次の段階に自分を進めたいと常に思っています。

---経営者として、一流とはどういう人だと思いますか?
 もちろん結果を出さなくてはいけないのですが、自分の芯を曲げない。信念を持って自分のやりたいことをやる。そしてみんなが賛同してきてくれる人ではないでしょうか。まだまだ自分はその域に達してはいないですけどね。

---さて、娘さんも合気道を稽古されていますが、どのようなお気持ちですか?
 親として見ていられないところがありますね。心配で、心配で(笑)。でも、本当に子どものことを考えているのなら辛い経験もさせないといけないと思うんです。子どものうちというのは、自分にいいことが認識出来ない部分があります。親としても辛いところですが、自分で生きる力を付けてもらわないといけないですし、結局親は最後まで守ってはいけないですからね。
でも、実際は娘の方から合気道を始めたいと言い出したんですよ。始めたら最後までしっかり続けなくてはいけないんだよ、とは伝えましたが、私の方から押し付けたことはありませんでした。

---では、最後に38年間も合気道を続けられる秘訣を教えてください!
 考えて続けることですね。せっかく時間を作って道場に行くのですから、どうすれば自分がもっと成長出来るのかをしっかりと考えて、その時間を有効に使うんです。
 人生って流れてしまう部分が多すぎるじゃないですか。ですから、しっかりと今を楽しんで稽古をすることが自分のモットーです。

---今日はありがとうございました!

株式会社バンダイナムコ ゲームス 執行役員
社長室 グローバル戦略担当
グローバル戦略部 ゼネラルマネージャー(2009年4月現在)



▲'08年鏡開き式での演武(お嬢さんと)

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