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Off Time Vol.09
今回のインタビューは、学生時代から合気道の稽古に励み、
現在文化庁に勤められている田井祐子さんです。
一般的には男性社会であると思われがちな合気道や官庁の世界ですが、
女性としてどのような心構えで臨み、現在に至っているのか。
また、文化の面から将来の日本への想いも語っていただきました。女性の方、必読です!!('07.9月)



---どのような経緯で天道館に入門されたのですか?
 職場の方に紹介していただいたのがきっかけです。天道館で稽古をされている方が同じ職場にいらっしゃり、私が合気道をしていたことを知って声を掛けていただきました。それが縁になって、天道館へ入門させていただきました。清水先生の技に感動しましたし、何より道場と、門人さんたち同士の雰囲気がとても素晴らしいと思いました。

---田井さんと合気道との最初の出会いはどのようなものだったのですか?
 中学生の時に友達から武術のマンガを借りたのが始まりでした(笑)。伝統的なもの、特に武道に触れたいなという気持ちがあって、高校時代は地元の町道場を見付けて稽古をしました。進学した大学も合気道の部活が盛んなところだったので、入部してからは、本当に合気道一色の学生生活でしたね。同じ学年では15 人中女性部員は3人で、比較的少数でした。

---周りのほとんどが男性で戸惑うことはありませんでしたか?
 合気道を始めた当初は、私は女性としては比較的背が高い方だったこともあり、男性と稽古するときも結構力技で稽古をしていました。男性に負けたくないという気持ちで張り合っていた面があったのだと思いますが、やはり男性と比べて体力差があるので、すぐに壁にぶつかって悩みました。
 そんな中で、同じ学年に小柄な女の子がいたのですが、彼女はもちろん力では自分よりも背の高い男性には敵わないのですが、いつも自分のペースで淡々と稽古をしていました。ある時、彼女は急激に上達したんです。合気道は、正面から力でぶつかるのではなく、相手の力を受け流して無理のない形で技をかける武道ですが、その子は小柄で力技ができない分、そのことに早く気付いて身に付けたのだと思います。自分のことをよく知って、体型を活かした合気道をしていたんですね。そのような彼女を見ていて、弱みを強みにするようなことをしなければいけないんだなと思いました。

---合気道から普段の生活に活かされていることはありますか?
 正面からぶつかって張り合うのではなく、自然体で無理のない形でふるまうことも大事なんだということを合気道から学びました。仕事の面でも、以前に比べて職場に女性が増えてきたとはいっても、まだまだ男性の多い社会です。だからといって、無理をして男性と同じようにふるまおうとするのではなく、女性だから言える意見や考え方を出していけるようになれば、不自由や差別を感じることもなく生き生きと自分らしく仕事が出来ます。外に対して自分を強く見せようとするよりも、芯はあるけれども自然体の柔らかい雰囲気のある女性になりたいなと思うようになりました。自然体でいることが合気道から学んだことですし、逆に自然体でいられることが合気道を上達させるコツだとも思います。相乗効果になるといいですね。

---田井さんの職場では女性の人数はどのくらいの割合ですか?
 文化庁は比較的女性が多いところで、課内の3分の1が女性です。部署によっても違いますし、昔は女性の採用がとても少なかったため、上のクラスになるほど女性は少ないのですが、今では女性も多く採用されています。



---文化庁ではどのようなお仕事をされているのですか?
 私が所属しているのは文化庁文化財部の伝統文化課という部署で、日本の重要文化財や史跡などを指定し、補助金などの支援によって文化財を守っていくのが文化財部の主な仕事です。また、有形の文化財だけではなく、歌舞伎や文楽などの伝統芸能や染織や陶芸などの伝統工芸といった無形文化財の指定や、その体現者であるいわゆる人間国宝を指定し、支援をしたりもしています。

---なぜ、今のお仕事に就こうと思われたのですか?
 昔から美術館、博物館が好きだったんです。あと、子どもの頃から地元の民俗芸能のお神楽が好きでした。お神楽の日は子供も遅くまで起きていても許されたのが印象的だったんです (笑)。そういう伝統的なものによって地域が一体となる感覚に興味を持っていたということが大きいですね。

---文化庁の中で今後どのような活動をされていきたいと思っていますか?
 今は、伝統的な文化が人々の生活から遠いものになっているんじゃないかと感じます。
 国が指定した文化財を守ることは税金で成り立っているので、本当はもっと多くの人たちに、なぜ伝統的な文化が大事なのか、その魅力を分かってもらうことが大切だと思います。そのためには、伝統的な文化を身近に感じられる環境をつくることが必要です。例えば、美術館や博物館なんかに行かないと見られない特別なものじゃなくて、私たちが普段から住んで生活していく空間が、もっと文化的な場所であるべきだと思っています。

---ヨーロッパの多くの街にはいたる所に歴史的な建造物がありますよね。
 今の日本は、どこへ行っても均一な町なみだとよく言われますが、そうではなくて、その地域の文化や資源を活用したまちづくりが行われていけるように文化庁としても応援していきたいと思います。もちろん簡単なことではありませんが、そういう方向へ向かっていけるようにアピールしていきます。

---今の若者が日本の文化に興味が無いという以前に、知らないという方が大きいと思います。
 そうですね。子供の頃から自然とそういったものに触れられる環境にいれば、文化について深く考えていけるはずです。そして、優れた文化とは人の心を動かせるものだと思います。

---合気道も日本が誇る文化の一つだと思います。もっと、多くの人の身近なものになってくれればと願っています。今日はありがとうございました!それでは最後の質問です。合気道に興味を持たれている方達にメッセージをお願いします。
 まずは体験してみて下さいということですね。もしかしたら一生の出会いになるかもしれません!

---今日はありがとうございました!

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