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Off Time Vol.05
オフタイム・インタビューの三回目は、天道流合気道で女性唯一の四段である、
ビルギット・ラウエンシュタインさん(天道流合気道歴25年)です。
ドイツはもちろん、日本やシンガポールなどで天道流合気道の稽古・指導をされてきました。
どこの国の人々にも合気道は受け入れられると話すビルギットさんに、
今までの合気道普及における体験や、合気道の魅力を
堪能な日本語でおおいに語っていただきました。('06.5月)


---まず、合気道を始められた理由を聞かせて下さい。
 私は幼い時から護身術を学びたいと思っていて、最初は空手や柔道などの道場を見て回りましたが、母は私が武道を習うことに反対でした。それでも諦められずにいろいろな武道を探しました。そんなある日、ちょうどテレビで合気道の紹介をしていて、円運動の美しさや強さ、相手を飲み込むような動き、女性的な印象に惹かれました。合気道なら、ということで母も賛成してくれました。

--- 合気道から学んだことや、得たことはありますか?
 肉体的な面でも、精神的な面でも両方あります。肉体的な面では、身体のバランスがとれるようになりました。柔軟性や強さが身に付き、いつも体調が良く感じるようになりました。

 その他ですと、以前、ベルリンの街を夜遅くに一人で歩いていた時に、知らない男性に後をつけられたことがありました。だんだんと距離が縮まって身の危険を感じたのですが、合気道の当て身を入れると、相手は驚いて逃げていきました(笑)。精神的な面では、やはり精神のバランスが良くなったことです。道場の外でも、他の人に対して思いやりの気持ちを持てるようになりました。それまでは、自分のことだけを考えていたように思います。

---ビルギットさんは数ヶ国で天道流の合気道をされてきましたが、その経歴を簡単に教えて下さい。
 まず私が合気道を始めたのが、ミュンヘンのグロース・ハーダンで、その後、仕事の関係で東京へ行き、またドイツへ戻ってベルリン、ハンガリー、シンガポールなどへ行きました。ベルリンを拠点として、赴いた全ての場所で合気道の稽古をしましたね。特にシンガポールには約4年間滞在しました。

---ビルギットさんの母国であるドイツでの指導はどのようなものでしたか?
 仲間とベルリンで指導を始めようとした時のことですが、当時はまだベルリンでは合気道がそれほど盛んではなく、新たに道場施設を借りて稽古を始めることにしました。その道場にはもともと柔道と柔術のクラブがあったのですが、合気道の動きを見たり、説明を聞いて、100人以上いた柔道と柔術のメンバーがみんな、我々の合気道クラブへ移動してきました(笑)。今では、ベルリンの各地に天道流の道場がたくさんあります。

---ドイツには多くの天道流合気道の門人がいますが、なぜドイツではここまで合気道が普及したのだと思いますか?
 まずは、清水先生が毎年指導にみえて頂けるお陰です。それ以外の理由としては、ドイツでは指導者がいれば、比較的簡単に政府からの援助を得てクラブを開くことが出来ます。そのため、自分の負担が少なく指導する環境を持つことが出来るのです。





▲'06 鏡開き式演武にて
---天道流シンガポールの誕生・発展には、ビルギットさんの活躍が大いにあったと聞いていますが、どのような苦労がありましたか?
 最初はとても難しかったですね。シンガポールの場合はドイツと違い、政府の検査が厳しく、簡単に武道を教えるということができないのです。特に外国人の場合はスポンサーを見付け、政府の公認を得ないといけません。ですから最初は、いろいろな人に会ってスポンサーを見付けられるまでは本当に大変でした。

---指導ができるようになってからはどうでしたか?
 指導を始めるまでにはいろいろな難しさがあったのですが、シンガポールの人達は合気道にとても興味があって、宣伝すると大勢の人達が見学をしに来ました。最初はたまたま女性向けの雑誌に広告を載せたのですが、多くの女性が入門してきました。その後も雑誌やテレビなどの取材を受けるようになり、たくさんの方々の協力のもと指導をすることが出来ました。私が直接指導をしていた当時は、女性が全体の60%以上を占めていました。

---ドイツ、シンガポール、日本では、稽古や道場の雰囲気に何か違いを感じましたか?
 ありますね。まず、ドイツの場合だと、日本と違い、指導者と弟子の関係が対等で友達関係のように接したり、会話をします。他のヨーロッパの道場もそのような関係であると思います。また、稽古では精神も重要視されますが、より体力面に重きをおいた稽古法が多いように感じます。
 シンガポールは先生と弟子はちょうどドイツと日本の中間あたりの関係です。また先ほども述べましたが、門弟全体の60%を女性が占めていました。理由としましては、女性の社会における上昇志向が高く、行動的であるからだと思いました。護身術として合気道を学ぶ門弟も多かったです。
 最後に日本の天道館は、道場に一歩入った途端に外とは違う空気を感じます。門弟の方々が自分自身を常に鍛錬しようとする気持ちが伝わってきます。

---まったく新しい地で合気道を始める時というのは、どのような気持ちなのですか?
 常に新しいことに挑戦したいという気持ちがあります。特にシンガポールの場合は最初にたくさんの問題があって、何度もダメだと諦めそうになった時もありましたが、結局は指導を始めることができました。新しい地に合気道の道場ができるというのはとてもうれしいものです。今まで、いろいろな場所で合気道をしてきましたが、合気道の持つ自然な美しさや、精神はどこの国の人や、違う文化を持つ人達にも受け入れられると思います。

---最後の質問です。合気道が上手くなる簡単なコツがあれば教えて下さい。
 ん〜、続けることです(笑)。あとは合気道を好きになることですね!

---今日はありがとうございました! では、これから合気道を始めようかと考えている人達に何かメッセージをお願いします。
 興味があるなら、まず深く考え過ぎないでやってみて下さい。直接肌で感じれば、合気道の良さを体験できると思います。


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